コモンズ・フォーラム#1
「複数の世界、歴史、物語——多声的芸術はいかに可能か?」

Commons Forum #1

  • フォーラム
© Saodat Ismailova

世界の難民・避難民が人類史上はじめて、1億人を超えた。またこの半年の間に、中東や欧州で継続中の戦争や対立が激化し、芸術の世界にも劇的な分断をもたらしている。敵か味方か、正義か悪か、被害か加害か。止めることのできない暴力はこうした二項対立的思考を煽り、対話の回路をさらなる暴力で粉砕してしまう。またその「正義」のカテゴリーからはみ出るリスクを回避するあまり、他者の権利や自由さえも「正義」によって抑圧される事態が起きている。
「芸術は可能か?」という問いさえも虚しく感じられる現在の世界において、それでも芸術家が取りうるアプローチとはどのようなものか。子ども時代に難民としてイランから欧州に移住したナスタラン・ラザヴィ・ホラーサーニ、シルクロード、イスラーム、旧ソ連がクロスする故郷ウズベキスタンを撮り続けるサオダット・イズマイロボらの声を聞きながら、複数の世界とその歴史、そこからこぼれ落ちてきた声や存在に、私たちはどう触れることができるのだろうか。

登壇者|サオダット・イズマイロボ(映像作家、アーティスト)、ナスタラン・ラザヴィ・ホラーサーニ(アーティスト)、藤井光(アーティスト)
司会|相馬千秋(シアターコモンズ実行委員長兼ディレクター)

プロフィール

サオダット・イズマイロボ
タシケントとパリを拠点に活動。ポスト・ソビエト時代に誕生した中央アジアのアーティスト第一世代の重要な発言者として知られている。タシケント国立芸術学院とフランスのル・フレノワで学ぶ。2004年にはドキュメンタリー映画『アラル。Fishing in an Invisible Sea』(カルロス・カサスと共に制作)はトリノ映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。シネファウンデーションの支援を受けた長編映画『沈黙の40日』(2014年)はベルリン国際映画祭でプレミア上映され、カンヌ国際映画祭に出品された。2013年にはヴェネチア・ビエンナーレで初のビデオインスタレーションを発表し、2022年には​同芸術祭のメイン展示「The Milk of Dreams」に作品が選出された。ドクメンタ15​では、中央アジア​のアーティスト・コレクティブ「ダヴラ」を立ち上げ​た。イズマイロボの作品は、ポンピドゥー・センター、アムステルダム・ステデライク美術館、アルマトイ近代美術館などに収蔵されている。

© Rinat Karimov

ナスタラン・ラザヴィ・ホラーサーニ
マーストリヒト演劇アカデミー卒業。2014年、最も印象的なステージパフォーマンスに贈られるGouden Krekel賞を受賞。2020年にはthe Nederlandse Dansdagenにて若い観客のためのダンス賞にノミネートされた。『Songs for no one – 誰のためでもない歌』は、BNG Bank Theater awardを2度受賞(2020年と2021年)し、Flemish Theater Festival及び、フランクフルト-オッフェンバッハの2都市で開催されたテアター・デア・ヴェルト2023に選出された。2023年にはGieskes-Strijbis Podium Prizeにノミネートされた。

© Julian Maiwald

藤井光(ふじい・ひかる)
芸術は社会と歴史と密接に関わりを持って生成されるという考え方のもと、世界各地の歴史や出来事を綿密にリサーチし、今日の社会課題に応答する作品を、主に映像インスタレーションとして制作している。その方法論は、各分野の専門家との領域横断的かつ芸術的協働をもたらす交点としての議論の場を作り出すなど、過去と現代を複層的につなぎ歴史や社会の不可視な領域を構造的に批評する試みを行っている。近年では、第10回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2021)、森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム」(2023)などに参加し、2020年Tokyo Contemporary Art Award 2020–2022を受賞。

© Shunta Ishinami_WORKSIGHT

相馬千秋(そうま・ちあき)
シアターコモンズ実行委員長兼ディレクター(2017–現在)。NPO法人芸術公社代表理事。アートプロデューサー。演劇、現代美術、社会関与型アート、VR/ARテクノロジーを用いたメディアアートなど、領域横断的な同時代芸術のキュレーション、プロデュースを専門としている。フェスティバル/トーキョー初代プログラム・ディレクター(2009–2013)、あいちトリエンナーレ2019および国際芸術祭あいち2022パフォーミングアーツ部門キュレーター。2015年フランス共和国芸術文化勲章シュヴァリエ受章、2021年芸術選奨(芸術振興部門・新人賞)受賞。2021年より東京藝術大学大学院美術研究科准教授。2023年ドイツで開催された世界演劇祭テアター・デア・ヴェルト2023のプログラム・ディレクターを務めた。

© NÓI CREW

日時

3月3日(日)16:00–18:00

上演時間

120分

会場

ゲーテ・インスティトゥート東京
〒107-0052 港区赤坂7-5-56

チケット

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上演言語

英語(日本語通訳付き)

クレジット

主催|シアターコモンズ実行委員会
会場協力|ゲーテ・インスティトゥート東京