森山直人ラボ

芸術史と「いま・ここ・わたし(たち)」を
接続する技術

芸術史

批評

編集

フェスティバル/トーキョー11主催プログラム『わたくしという現象(宮澤賢治「春と修羅・序」より)』構成・演出:ロメオ・カステルッチ Photo:Jun Ishikawa

自分にとっては必然性があり、極めて新鮮な驚きや発見も、芸術史においてはすでに多くの表現者が試みたことかもしれません。本ワークショップでは、主に20世紀の芸術史、特に現代演劇や現代舞踊の開拓者たちが試みた理論や実践を「いま・ここ・わたし(たち)」の立ち位置から掴み直し、それぞれの活動に役立てる回路をともに探ります。さらに実践プログラムの一環として、講師陣とともに『超入門20世紀身体表現史』(仮)の編纂をイメージした目次や年表づくりに取り組みます。

スケジュール

各回17:30-21:30(予定)

① 2017年7月21日[金]
「芸術史へのアプローチ」 森山直人 

② 2017年7月28日[金]
「戯曲」「言葉」「劇場」 川島健(演劇研究者)

③ 2017年8月24日[木]
「身体」「演技」「俳優」 横山義志(演劇研究者)

④ 2017年9月28日[木]
「社会」「観客」「批評」① 萩原健(演劇研究者)

⑤ 2017年10月26日[木]
「国家」「共同体」「個人」 上田洋子(ロシア文学者)

⑥ 2017年11月23日[木・祝]
「社会」「観客」「批評」② 高橋宏幸(演劇批評家)

⑦ 2017年12月21日[木]
「テクノロジー」「メディア」「ミュージアム」 加治屋健司(美術史家)  

⑧ 2017年12月28日[木]
「パフォーマンス」「性」「民族」 岩城京子(演劇研究者)

ディレクター

森山直人(演劇批評家、京都造形芸術大学舞台芸術学科教授)

会場

港区エリア(詳細は決定次第、当サイトにて発表します)

定員

15名程度(書類及び面接審査により決定)

応募資格

・原則としてワークショップの全日程(上記①〜⑧)に参加できる方

・年齢、国籍不問(ただしワークショップは日本語で実施)

こんな人にオススメ

・自分の表現や考えが、歴史的な観点からみるとどうなのか知りたい。

・アートや演劇に関する知識が断片的なので、もっと流れで理解したい。

・演劇史や芸術史で起きたイノベーションを理解した上で、別の活動や思考に応用したい。

・編集的な視点や思考を身につけたい。

ディレクター・メッセージ

かつて、近代日本には「教養主義」と呼ぶべき伝統が存在しました。「近代人」であるなら、必ず身につけておくべき基礎的な「知」=「教養」がある、という発想です。1990年代以後、こうした伝統は、それがエリート主義的な「常識」に支えられすぎていたこともあって、日本ではほぼ終焉を迎えたといってよいでしょう。もっとも、日本の舞台芸術に関して言うなら、そうした「教養」は、実は1980年代にはとっくに崩壊してしまっていたのですが。

それゆえ、いま「舞台/芸術史」にアプローチするということは、そうした崩壊の果てに、なお私たちが物を考えたり創作したりする際の、「共有の基礎」となる知見が何であるかを発見していく旅でしかありえません。8回という限られた時間ですが、このラボは、20世紀から今日までの、舞台芸術に関連する「規範的な歴史(=キャノン)」をひとまず復習しながら、私(たち)にとっての「基礎」が何であるかを(再)発見していくツアーのようなものだと考えていただければよいでしょう。そのためには、たんなる演劇史やダンス史の教科書的なおさらいにとどまらず、20世紀から21世紀にかけての幅広い芸術史のなかで、「劇場」が何であったのかを、たえず問いかけようとする横断的な視点が不可欠でしょう。

たくさんの文献を読み、たくさんの映像を見て、たくさんの人たちと議論する──その果てに、私(たち)の生きる「時代」が、そして、私(たち)の「時代」が希求している新しい「教養」が、リアルに立ち上がってくる様を、一緒に目撃してみたくはありませんか?

各回内容

第1回:7月21日(金)
森山直人「芸術史へのアプローチ」

「舞台芸術」における21世紀とは何か?」あるいは、「舞台芸術」における21世紀はありうるのか?」といった問いを根源的に思考していくために、いかに「舞台芸術史」にアプローチしていけばよいのかを検討していく。そのためには、「舞台芸術」の自明性を一度疑い、演劇やダンスやパフォーマンスを、あらためて19世紀から20世紀にかけて、人類が体験した歴史的総体のなかに置きなおしてみなければならないだろう。たとえば、20世紀は「映像の世紀」であり、「科学技術と戦争の世紀」であったわけだが、舞台芸術は、そうした歴史の総体とどのように関わってきたのか。そのなかで、舞台芸術における「近代」とは、「現代」とは、どのようなものとして考えられるのか。
第1回は、他の芸術ジャンルとの関係も含め、そうした基本的な問いを中心に検討していきたい。

第2回:7月28日(金)
川島健「戯曲」「言葉」「劇場」

「物語」と「神話」。韻文と散文。詩的言語とは何か。
長い間、「言葉」は「演劇」の中核をなしてきた。言葉で書かれ、記録されることによって、「演劇」は後世に伝えられることができたのである。19世紀後半のリアリズム(または自然主義)の誕生とともに、「自律した芸術作品としての戯曲」という概念は、散文を通じて再編されてきた。こうして成立した「戯曲中心主義」は、一方では演出家の誕生を促し、他方では、戯曲中心主義に対するさまざまなアンチテーゼを生む原動力となっていった。
第2回は、そうした視点から、近代における戯曲と演出家の成立と誕生、および20世紀全体を通じたその後の展開を概観し、多面的に検討していく。

第3回:8月24日(木)
横山義志「身体」「演技」「俳優」

「近代」は、演劇の根幹のひとつである「演技」に対する考え方を大きく変えた時代であった。それ以前において重要であった台詞の朗誦術は、照明技術の進化を通じて「見る」要素を増していく近代演劇の時代のなかで、相対的な地位を低下させ、かわりに、市民社会の日常生活をナチュラルに切り取るための、心理と運動に対するアプローチがさまざまな形で実践されることになった。こうして確立され、世界的に普及していくスタニスラフスキーの方法論に対して、反リアリズム的な立場からの演技論が、数多く提出されることになる。
第3回は、こうした近代における「演技」論を、ギリシャ・ローマから現代に至る、演劇史における広範な演技の歴史のなかでもう一度捉え直し、その限界と可能性について考えていく。

第4回:9月28日(木)
萩原健「社会」「観客」「批評」①

19世紀後半に電気照明が導入されて以後、「劇場」は、先端的な科学技術の大規模な実験場のひとつとなっていった。自然主義と象徴主義の対立的な芸術運動の進展のなかで、劇場と観客の関係性をめぐって多種多様な関係性が、まだ誕生してまもない演出家という職能を名乗る芸術家たちによって試みられることになる。20世紀前半のドイツは、そうした「演出家の演劇」が最も活発に展開された地域であった。
ここでは、「劇場」の祝祭性をめぐって数々の実験を行ったマックス・ラインハルトから、そうした同化的演劇とは異なる社会批評的な演劇を、最新の映像テクノロジー等を駆使して実践したエルヴィン・ピスカートア、さらには、彼らの方法論を批判的に受け止めながら、世界的な演劇作家となっていったベルトルト・ブレヒトに至る動きを中心にすえながら、劇場における「観客」と、彼らを取り巻く「社会」、演劇に固有の「批評」精神の関係を探っていく。

第5回:10月26日(木)
上田洋子「国家」「共同体」「個人」

ギリシャ悲劇の時代から、演劇は、「国家」「共同体」「個人」というテーマと不可分の関係にあった。自律したテキストは近代的個人における「理性」と、パフォーマンス(上演)の祝祭性は、共同体の求心力と、それぞれの時代ごとに深い関係を結んできた。また、優れたテキストの必要性は、それぞれの国・地域における「国語」の発展を促したが、そのこと自体、近代におけるナショナリズムと浅からぬ関係をもっている。ワーグナーは、近代的個人としての観客を、芸術家の作品に没入させる巨大な装置として、彼自身の楽劇と劇場を実現したのである。
第5回では、こうした演劇史の流れを考慮しつつ、ロシア革命前後にヨーロッパから日本まで、一世を風靡した演出家メイエルホリドを中心に取り上げながら、演劇における「国家」「共同体」「個人」について考えていく。メイエルホリドが直面したのは、革命を通じて誰にとっても未知の「国家」「共同体」となった「ソ連」の成立下で、まさにそれらを演出家個人の才能を通じて牽引しようとした存在だった。なぜ彼の実験は、全体主義の凶弾に倒れなければならなかったのか。

第6回:11月23日(木・祝)
高橋宏幸「社会」「観客」「批評」②

明治維新以後、アジアで最初に「近代化」の道を歩み始めた日本は、近代国家としてのアイデンティティを獲得するために、広範囲なジャンルで一種の「文化革命」(「伝統」の否定もしくは再編)を必要とした。日本の近現代演劇史も、そのような地点からスタートし、「西欧近代」を規範としつつも、必ずしもそれだけにとどまらない独自の展開をみてきたのであった。
第6回では、そのような視点に立ち、こうした演劇史全体に対して最もまとまった批判を実践した「アングラ演劇」の理論と実践を中心にしながら、今日至るところで生じている、「非西欧圏における近代化と演劇」の関係を思考する上での、事例研究としての「日本」を見直していく。「日本近現代演劇史」は、現在の視点からは、どのように読むことができるだろうか。

第7回:12月21日(木)
加冶屋健司 「テクノロジー」「メディア」「ミュージアム」

20世紀において、舞台芸術は、他の様々なジャンルとかかわりを持ちながら発展してきたが、「20世紀芸術」全体は、20世紀全体を特徴づける科学技術やメディアの発展と、その都度深く切り結んできた。第8回では、現代美術の専門家である加治屋氏を迎え、現代美術における20世紀を、「テクノロジー」や「メディア」の観点から振り返りつつ、現代演劇史を隣接ジャンルとの関係から見直していく。「パフォーマンスアート」という、今日の舞台芸術を考える上で欠かすことのできない表現様式を生んだ現代美術の歴史は、今日の舞台芸術を思考する上で、どのような刺激をもたらしうるのだろうか。また、現代美術における重要なトピックとしてさまざまな研究が積み重ねられてきた「ミュージアム」の歴史的意味は、「劇場」を思考する上でどのようなヒントを与えてくれるのだろうか。

第8回:12月28日(木・祝)
岩城京子「パフォーマンス」「性」「民族」

最終回では、とりわけ20世紀後半に、「パフォーマンス」という概念から派生し、重要な問題系を構成するに至った「パフォーマティヴ/パフォーマティヴィティ」という概念を手がかりに、「演劇」や「ダンス」を、社会とのより広い関係性のなかで捉える方法について検討していく。私たちの生きている社会において、時に自明のように感じることさえある「性」や「民族」が、たえずパフォーマティヴ(行為実践的)に再生産されていくものと考えたとき、ある種の「演劇的行為」は「劇場」の枠組を超越して日常的におこなわれていると考え得る。またそうした社会でのパフォーマンス実践が、演劇・ダンスの道徳感に影響を及ぼしていく。
「劇場」は、そのような「社会的規範」をどのように異化し、「別の視点」を提示しうるのか。岩城氏とともに、横断的な記述・分析を試みていく。

プロフィール

ディレクター

森山直人

もりやま・なおと

演劇批評家、京都造形芸術大学舞台芸術学科教授

1968年生。演劇批評家。京都造形芸術大学舞台芸術学科教授、同大学舞台芸術研究センター主任研究員、及び機関誌『舞台芸術』編集委員。KYOTO EXPERIMENT(京都国際舞台芸術祭)実行委員長。著書に『舞台芸術への招待』(共著、放送大学教育振興会)等。主な論文に、「〈オープン・ラボラトリー〉構想へ」(『舞台芸術』20号)、「チェーホフ/エドワード・ヤン:「現代」を描き出すドラマトゥルギーの「古典性」について」(『アジア映画で〈世界〉を見る』(作品社)所収)、「「記憶」と「感覚」――ユン。ハンソル『ステップメモリーズ』の衝撃」(『F/T12 DOCUMENTS』)、他多数。

応募要項

応募要項

応募は締め切りました。

選考方法

提出書類に基づき、事務局およびディレクターによる選考会により決定。

選考結果

2017年7月7日までに審査の結果をメールにて通知。

参加料

15,000円
*参加料はワークショップ初日に全額現金でお支払いいただきます。
*リサーチにかかる交通費、諸経費等は自己負担となります。

応募〆切

2017年6月25日(日)24時 必着

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