Commons Forum #3
- フォーラム
私たちが日常的に体験していると信じている「現実」とは何か? 発展著しいXR技術は、私たちの知覚や現実の認識を確実に揺さぶり、書き換えながらも、人間に、「現実」とそうでないものの境界線を問いかけている。映画監督アピチャッポン・ウィーラセタクンが日本のVRクリエーターたちと手がけた体験型パフォーマンス『太陽との対話(VR)』は、私たちの無意識な記憶の奥底に眠っている感覚に触れ、生命の根源や死というものを、太陽の動きに重ねながら経験する特異なパフォーマンスとして、世界的に話題を集めている。
本フォーラムでは、日本科学未来館との主催のもと、「現実とは何か」という哲学的かつ科学的な問いに科学者とアーティストの対話から接近したい。脳科学者であり、SR(代替現実)研究を起点に「現実」とはなにかを問い続けてきた藤井直敬は、アピチャッポン監督が生み出してきた現実と異世界、両者を隔てる境界線が溶けるような「あわい」をどう読みとくのか。また、VR技術で拡張する表現や映画の新たな可能性など、二人の視点が交わったとき、新たな地平が開かれるはずだ。
登壇者|アピチャッポン・ウィーラセタクン(映画監督、アーティスト)、藤井直敬(株式会社ハコスコ取締役CTO、医学博士・脳科学者)
司会|宮原裕美(日本科学未来館)
プロフィール
アピチャッポン・ウィーラセタクン
1970年タイ・バンコク生まれ。現在はタイ・チェンマイを活動拠点とする。1994年から短編映画やショート・ビデオの制作を始め、2000年に初の長編作品を製作。国際的な映画作家、ビジュアル・アーティストとして知られている。彼の作品は、記憶、アイデンティティ、欲望、歴史をテーマにした非直線的なストーリーテリングを特徴とする。タイ国外で初めて撮影された『Memoria』で2021年カンヌ映画祭審査員賞を受賞。2010年には『ブンミおじさんの森』でカンヌ映画祭パルムドールを受賞。『トロピカル・マラディ』(2004)でカンヌ映画祭の審査員賞、『ブリスフリー・ユアーズ』(2002)で「ある視点」部門最優秀作品賞を受賞。大規模なビデオインスタレーション「プリミティブ」(2009)は、ミュンヘンのハウス・デア・クンストを始め、多くの美術館を巡回した。ドクメンタ13(2012)に参加したほか、第11回シャルジャ・ ビエンナーレ(2013)ではチャイシリとの協働作品が金賞を受賞。同年、福岡アジア文化賞受賞。2016年、チェンマイのMAIIAM現代美術館でタイ国内初の大規模個展を開催。近年のインスタレーションに《Constellations》(2018)、《Fiction》(2018)、《SleepCinemaHotel》(2018)、《A Minor History》(2021、2022)、《Solarium》(2023)などがある。
藤井直敬(ふじい・なおたか)
株式会社ハコスコ取締役CTO。医学博士・脳科学者。一般社団法人 XRコンソーシアム代表理事、ブレインテックコンソーシアム代表理事。東北大学 特任教授。東北大学医学部卒業後同大学院にて博士号取得。1998年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)、 McGovern Institute 研究員。2004年より理化学研究所脳科学総合研究センター副チームリーダー、2008年よりチームリーダー。2014年株式会社ハコスコを起業。2018年よりデジタルハリウッド大学大学院教授。研究テーマは「現実科学」。主な著書に、『つながる脳』(毎日出版文化賞受賞)『ソーシャルブレインズ入門』『拡張する脳』『脳と生きる』『現実とは?』など。
日時
3月10日(日)16:30–18:00
*開場は開演時間の30分前
上演時間
90分
会場
日本科学未来館 7F イノベーションホール
〒135-0064 江東区青海2-3-6
チケット
無料・要予約
上演言語
日本語(英語通訳付き)
クレジット
主催|日本科学未来館、シアターコモンズ実行委員会
協力|現実科学ラボ