Yuko Nakamura
“The Unseen Gaze”
- ワークショップ
- 展示
- リモート参加有
シネエッセイという手法で顕在化する若者のまなざしを、私たちはいかにまなざすのか。
映画監督・作家の中村佑子。『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』をはじめ、繊細な揺らぎを触覚的に掴み取る独自の映像世界で高い評価を得てきた。一方、単著『マザリング 現代の母なる場所』では、「母なる場所」をめぐる壮大な哲学的エッセイを編み上げ、新たな女性文学の最前線を切り拓いている。またシアターコモンズ’21では、AR体験型映画『サスペンデッド』で新たな映像表現に挑戦し、大きな反響を呼んだ。
今回中村は、エッセイを書くように映像を綴るシネエッセイの手法で紡がれた言葉をベースにして、映像表現と散文表現の新たな地平を開拓するワークショップを展開。その成果をインスタレーションとして展示する。対象は青春時代をパンデミックの中で過ごしている現代の若者たち。震災、新型コロナ、遠くの戦争……思い返せば幼少期から「非常事態」に生きねばならなかった若者たちの、日常の記憶や感覚がシネエッセイという形で顕在化したとき、そこにはどんな宙吊りの感覚が立ち現れるだろう。シネエッセイには鑑賞者自身が批判的に映し出されてもいる。若者のまなざしを、私たちはどのようにまなざし返すのだろうか。
—ワークショップ開催にあたって— 中村佑子
立教大学の学生たちにシネエッセイを創作してもらうなかで、私は何度も息を呑んだ。疫病に戦争……混沌としたまま突き進む今の世界を、彼らは日常的なまなざしから射抜き、この社会を作った私たち大人をまなざし返しているとも感じた。
「まなざしはまなざされない」とは、映像人類学者トリン・T・ミンハの言葉だ。西洋社会がアフリカの女性たちに向けた差別的な視線を、批判的に捉え直している。ミンハ自身は、視線の権力構造に絡めとられることなく、アフリカの女性たちを親密に、慎み深く、シネエッセイとして残した。
シネエッセイとは、誰でも手軽に作ることができる、例えるなら活字におけるZINEのようなもので、生活のなかから生まれる、ゲリラ的で民主的な手法でもある。
誰もが手にできる、この軽やかな創作手法によって、複雑な世界をあらためて眺め渡してほしい。言葉と映像によって、自分の思索の跡を再起的に辿ることによって、自らも把握できない無意識的な感覚が呼び覚まされるはずだ。ぜひご参加を!
プロフィール
中村佑子(なかむら・ゆうこ)
1977年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。哲学書房にて編集者を経て、テレビマンユニオン参加。美術や建築、哲学を題材としながら、現実世界のもう一枚深い皮層に潜るようなナラティブのドキュメンタリーを多く手がける。映画作品に『はじまりの記憶 杉本博司』、『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(HOTDOCS正式招待作品)、テレビ演出作にWOWOW「はじまりの記憶 現代美術作家 杉本博司」(国際エミー賞・アート部門ファイナルノミニー)、NHK「幻の東京計画 首都にありえた3つの夢」(ギャラクシー奨励賞受賞)、NHK「建築は知っている ランドマークから見た戦後70年」などがある。シアターコモンズでは、2019年にスーザン・ソンタグの『アリス・イン・ベッド』のリーディングを演出、2021年にはAR体験型映画『サスペンデッド』を発表した。文芸誌『すばる』での長期連載を経て、2020年に初の単著『マザリング 現代の母なる場所』を出版。立教大学映像身体学科兼任講師。
日時
ワークショップ|
2月9日(木)13:00–16:00 第1回:シネエッセイ制作方法のレクチャー
2月16日(木)13:00–16:00 第2回:制作の中間報告
2月24日(金)13:00–16:00 第3回:作品の講評
オンライン配信(第1回ワークショップ)|
2月23日(木・祝)–3月31日(金)
展示|
3月2日(木)–5日(日)13:00–20:00(最終日は19:00まで)
会場
SHIBAURA HOUSE 3F
〒108-0023 港区芝浦3-15-4
参加方法
ワークショップ|要申し込み
– 対象:15–30歳程度の方
– 定員:10名程度(応募者多数の場合は選考)
– 参加費:無料
– 募集期間:2022年12月23日(金)–2023年1月18日(水)23:59
(結果は1月25日(水)までにメールにて通知)
お申し込みは締め切りました
オンライン配信|パス購入後に送付される専用ページ掲載のURLよりアクセスしてください
*第1回ワークショップのレクチャーの様子をオンラインで配信します。
展示|予約不要・コモンズパス提示
上演言語
日本語
クレジット
構成・演出|中村佑子
映像出展|川上紗和、兒崎七海、高木希美、村山陽那乃、堰沢連、高瀬凜子、中川舞、濱崎真由子、小山まりあ、樋口結衣子、吉田灯里
制作アシスタント|清水ひなた、辻響子
協力|立教大学現代心理学部映像身体学科