Commons Forum #1
“On ‘Bodies in Incubation’ in an Age of Illness”
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世界的なパンデミックから早1年。他者との接触、他所への移動が制限される中、私たちの身体感覚も、明らかな変容を経験している。同時に、誰もが無自覚のまま感染の加害者/被害者になりうる事態は、「健康であること」が価値とされる近代社会を激しく揺さぶっている。
パンデミック下において、個々人の身体を管理しようとする生権力の増大に対し、病や死も含めた個々人の「からだ」や「こころ」の個別性や尊厳を、私たちはいかに回復することができるのか。芸術はこの問いに対し、どのようなアプローチが可能なのか。身体性を軸に新作を創作する二人のアーティストの声を聞きながら、病の時代における芸術の可能性を議論する。
登壇者|伊藤亜紗(美学者・東京工業大学准教授)、中村佑子(映画監督・作家)、百瀬文(アーティスト)ほか
司会|相馬千秋(シアターコモンズ ディレクター)
プロフィール
伊藤亜紗(いとう・あさ)
美学者。東京工業大学准教授。もともと生物学者を目指していたが、大学3年次より文転し、人間の体の多様なあり方を研究。主な著作に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)、『どもる体』(医学書院)、『記憶する体』(春秋社)、『手の倫理』(講談社)など。WIRED Audi INNOVATION AWARD 2017、第13回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞、第42回サントリー学芸賞を受賞。
中村佑子(なかむら・ゆうこ)
1977年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。哲学書房にて編集者を経て、テレビマンユニオン参加。美術や建築、哲学を題材としながら、現実世界のもう一枚深い皮層に潜るようなナラティブのドキュメンタリーを多く手がける。映画作品に『はじまりの記憶 杉本博司』、『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(HOTDOCS正式招待作品)、テレビ演出作にWOWOW「はじまりの記憶 現代美術作家 杉本博司」(国際エミー賞・アート部門ファイナルノミニー)、NHK「幻の東京計画 首都にありえた3つの夢」(ギャラクシー奨励賞受賞)、NHK「建築は知っている ランドマークから見た戦後70年」などがある。シアターコモンズ’19ではスーザン・ソンタグの『アリス・イン・ベッド』のリーディングを演出。文芸誌『すばる』での長期連載を経て、2020年12月に初の単著『マザリング 現代の母なる場所』を出版。
百瀬文(ももせ・あや)
1988年東京都生まれ。アーティスト。パフォーマンスを記録するための方法としてビデオを用いはじめ、撮影者と被写体のあいだの不均衡性を映像内で再考させる試みを行う。近年の主な個展に「サンプルボイス」(横浜美術館アートギャラリー1、2014年)、主なグループ展に「戦争画STUDIES」(東京都美術館ギャラリーB、2015年)、「アーティスト・ファイル2015 隣の部屋――日本と韓国の作家たち」(国立新美術館、韓国国立現代美術館、2015-16年)、「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、2016年)などがある。2020年には自身の個展「I.C.A.N.S.E.E.Y.O.U」や遠藤麻衣との共作展「新水晶宮」を開催、セクシュアリティやジェンダーへの問いを深めている。
相馬千秋(そうま・ちあき)
NPO法人芸術公社 代表理事/アートプロデューサー。「フェスティバル/トーキョー」初代プログラム・ディレクター (F/T09春〜F/T13)、文化庁文化審議会文化政策部会委員(2012-15)等。2015年フランス共和国芸術文化勲章シュヴァリエ受章。2016年より立教大学現代心理学部映像身体学科特任准教授。2017年より「シアターコモンズ」実行委員長兼ディレクター。「あいちトリエンナーレ2019」のキュレーター(舞台芸術)も務めた。