市原佐都子/ジャコモ・プッチーニ
「蝶々夫人」

Satoko Ichihara / Giacomo Puccini

"Madama Butterfly"

リーディング

西洋/男性から眼差されてきた日本/女性のステレオタイプ「蝶々夫人」。
その非対称な欲望を裏返す、倒錯的リーディング。

今から130年前、フランス人作家ピエール・ロティは軍人として長崎港に逗留し、現地妻との生活をエッセイ「お菊さん」としてフィガロ紙に連載した。その10年後、アメリカ人作家ジョン・ルーサー・ラングが小説『マダム・バタフライ』を発表、その原作をもとにプッチーニがオペラ『蝶々夫人—日本の悲劇』を初演したのは1904年のことだ。それから120年が経った今でも人気オペラであり続ける「蝶々さん」のイメージは、「日本人女性」に向けられるオリエンタリズムの眼差しと未だに無縁ではない。
人間の生と性に関わる違和感を大胆かつ緻密に描く劇作家・演出家の市原佐都子は、2020年の今あえて、西洋と東洋、男と女の間の圧倒的不均衡から生まれた物語を集団音読のテキストに選んだ。15歳の芸者が米国軍人の現地妻として差し出され、夫の帰りを3年待った挙句に、本妻との帰還を知って自害する。この救いどころのないメロドラマを、現在の私たちはいかに善悪を超えて笑い飛ばすことができるのだろうか。

リーディング・パフォーマンス

2020年の東京で、声に出して戯曲を読む。
東京の日常に媚薬を垂らし、波紋を広げるリーディング・パフォーマンス。

声に出して戯曲を読む。演劇にとって最もシンプルな営みは、俳優だけではなく、あらゆる人に開かれている。だが、実際に一つの戯曲を最初から最後まで声に出して読んだ経験がある人は意外と少ないものだ。それでは今、オリンピックを目前に控えた東京で、自分が声に出して読むとしたら、どこで、どんな言葉だろうか?
リーディング・パフォーマンスと題する本企画は、この問いを投げかけられた2人の演出家が提案する戯曲を、ある場所で、複数の参加者が初見で音読するというものだ。特別な準備や練習もない、ただ、戯曲に書かれた言葉を、たまたま居合わせた他の参加者とともに、声に出して読む。過去に書かれた言葉は、2020年の東京に生きるあなた自身の身体を経由し、「いま、ここ」にどのような変容をもたらすのか。2人の演出家が仕掛けるささやかな音読の時間と空間は、都市・東京の日常に、媚薬のように波紋を広げることになるだろう。

プロフィール

市原佐都子(いちはら・さとこ)
劇作家・演出家・小説家。1988年大阪府生まれ、福岡県育ち。桜美林大学にて演劇を学び、2011年よりQ始動。人間の行動や身体にまつわる生理、その違和感を独自の言語センスと身体感覚で捉えた劇作、演出を行う。2011年、戯曲『虫』にて第11回AAF戯曲賞受賞。2017年『毛美子不毛話』が第61回岸田國士戯曲賞最終候補となる。2019年に初の小説集『マミトの天使』を出版。同年ギリシャ悲劇を下敷きとした新作『バッコスの信女−ホルスタインの雌』をあいちトリエンナーレにて世界初演。本作は2020年世界演劇祭(ドイツ)でも上演予定。公益財団法人セゾン文化財団ジュニア・フェローアーティスト。

Photo: Mizuki SATO

日時

2月29日(土)14:00
3月5日(木)13:00
3月6日(金)16:00
3月8日(日)12:00

上演時間

約120分

注意事項

各回定員約20名(お申込いただいた皆様に音読の一部を担っていただきます)

会場

慶應義塾大学三田キャンパス
旧ノグチ・ルーム

〒108-8345 港区三田2-15-45 慶應義塾大学三田キャンパス南館3Fルーフテラス
会場お問合せ│03-5427-1621
*オンライン配信に変更となりました(詳細はこちら

参加方法

要予約・コモンズパス提示
パス購入はこちら

上演言語

日本語

クレジット

構成・演出・テキスト|市原佐都子
台本|オペラ「蝶々夫人」より
共催|慶應義塾大学アート・センター