Commons Forum #1
"Arts and Society"
言論イベント
今、世界の至るところでポピュリズムが台頭し、分断が顕在化している。ネット社会によってさらに扇動される敵対と不和は、私たちが生きるフィジカルな現実世界の対話や安全をも脅かす力として可視化されつつある。だが、こうした敵対と不和をしっかりと見つめ乗り越えていこうとする不断の営みのなかにこそ、「公共」や「公共圏」は生まれうるのではないか。本フォーラムでは、「わかりあえない者たち」が共存する世界を前提に、分断を社会のダイナミズムへと変換しうる芸術の可能性について議論する。先のあいちトリエンナーレやこれまで/これからのシアターコモンズでの実践を具体例に、社会関与型芸術(ソーシャリー・エンゲイジド・アート)やアート・アクティヴィズムの実効性や限界をめぐり、芸術批評、歴史社会学、キュレーション実践など複数の視点から未来への課題をえぐり出す。
登壇者│
伊藤昌亮(社会学者、『ネット右派の歴史社会学』著者)
藤井光(アーティスト)
相馬千秋(あいちトリエンナーレ2019キュレーター、シアターコモンズ ディレクター)
司会│藤田直哉(文芸評論家)
コモンズ・フォーラム
あいちトリエンナーレ2019以後、「表現の自由」や「芸術の公共性」をめぐる議論が噴出している。分断と不和が可視化された今日の社会において、私たちはどこへ向かうのか。今回のシアターコモンズでは、この火急の状況への応答として、4回にわたるコモンズフォーラムを集中開催。「芸術と社会」「芸術と公共」「芸術と仮想性」「芸術と政治」という4つのテーマ設定のもと、国内外から総勢20名を超える論客を招き、合計10時間を超える議論の場を設ける。歴史と未来をつなぎ、理論と実践を行き来しながら、社会の分断を乗り越えるための芸術の可能性について立ち止まって考える共有地が、今こそここに立ち現れるはずだ。
プロフィール
伊藤昌亮(いとう・まさあき)
成蹊大学文学部教授。専攻はメディア論。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。著書に『ネット右派の歴史社会学――アンダーグラウンド平成史1990-2000年代』(2019年・青弓社)、『デモのメディア論――社会運動社会のゆくえ』(2012年・筑摩書房)、『フラッシュモブズ――儀礼と運動の交わるところ』(2011年・NTT出版)、共著に『奇妙なナショナリズムの時代――排外主義に抗して』(2015年・岩波書店)など。
藤井光(ふじい・ひかる)
芸術は社会と歴史と密接に関わりを持って生成されているという考え方のもと、既存の制度や枠組みに対する問いを、綿密なリサーチやフィールドワークを通じて実証的に検証し、実在する空間や同時代の社会問題に応答する作品を映像インスタレーションとして制作している。最近は日本の近代に国内やアジアで構築された教育および社会制度や、博物館や美術館のあり方について問う作品を継続的に発表している。
相馬千秋(そうま・ちあき)
NPO法人芸術公社 代表理事/アートプロデューサー。「フェスティバル/トーキョー」初代プログラム・ディレクター (F/T09春〜F/T13)、文化庁文化審議会文化政策部会委員(2012-15)等。2015年フランス共和国芸術文化勲章シュヴァリエ受章。2016年より立教大学現代心理学部映像身体学科特任准教授。2017年より「シアターコモンズ」実行委員長兼ディレクター。「あいちトリエンナーレ2019」のキュレーター(舞台芸術)も務めた。
藤田直哉(ふじた・なおや)
批評家。日本映画大学専任講師。1983年北海道生まれ。東京工業大学大学院社会理工学研究科修了。博士(学術)。主な著書に『虚構内存在』『シン・ゴジラ論』(作品社)、『新世紀ゾンビ論』(筑摩書房)、『娯楽としての炎上 ポスト・トゥルース時代のミステリ』(南雲堂)、編著に『地域アート 美学/制度/日本』(堀之内出版)、『東日本大震災後文学論』(南雲堂)などがある。