中村佑子/スーザン・ソンタグ
『アリス・イン・ベッド』

Yuko Nakamura / Susan Sontag

“Alice in Bed”

リーディング

©Lynn Gilbert
他者の痛みとともに在ることは可能か?
スーザン・ソンタグによる「ベッドの国のアリス」、日本語での初リーディング。

今日ますます世界中で読み継がれる批評家スーザン・ソンタグの言葉。今回はじめて邦訳され、朗読される『アリス・イン・ベッド』は、一人の実在の女性、アリス・ジェイムズ(1848-1892)の物語である。哲学者ウィリアム・ジェイムズ、小説家ヘンリー・ジェイムズという著名な兄弟をもつ彼女は、兄たちに負けず劣らず才気に溢れていたが、若くして精神を病み、長年病床にいたという。ソンタグはアリスの死後40年を経て出版された日記をもとに、彼女の魂の彷徨や、父兄との葛藤を戯曲化した。
「女性性」をテーマに思索と創作を続ける映画監督・エッセイストの中村佑子が今回、自らこの戯曲の翻訳も手がけながら、アリスとその枕元に召喚された実在・架空の女性たち──詩人エミリー・ディキンソン、女性活動家マーガレット・フラー、魔女、妖精、亡き母──らの声を、この東京という都市に響かせる。女性として生きることの不条理や痛み。時代を超えて抑圧に抗いながら生きてきた女性たちが一同に会し、その感情を連鎖させていくことで、アリスの傷んだ魂を解放する……。彼女たちの身体から振り絞られるような言葉を声に出して読むことで、私たちは今、この社会で声をあげられない者たちの痛みとどのように共に在ることができるだろうか。

リーディング・パフォーマンス

2019年の東京で、声に出して戯曲を読む。
東京の日常に媚薬を垂らし、波紋を広げる。リーディング・パフォーマンス始動。

声に出して戯曲を読む。演劇にとって最もシンプルな営みは、俳優だけではなく、あらゆる人に開かれている。だが、実際に一つの戯曲を最初から最後まで声に出して読んだ経験がある人は意外と少ないものだ。それでは今、オリンピックを控えた東京で、自分が声に出して読むとしたら、どこで、どんな言葉だろうか?
リーディング・パフォーマンスと題する本企画は、この問いを投げかけられた3人の演出家が提案する戯曲を、ある場所で、複数の参加者が初見で音読するというものだ。特別な準備や練習もない、ただ、戯曲に書かれた言葉を、たまたま居合わせた他の参加者とともに、声に出して読む。過去に書かれた言葉は、2019年の東京に生きるあなた自身の身体を経由し、「いま、ここ」にどのような変容をもたらすのか。3人の演出家が仕掛けるささやかな音読の時間と空間は、都市・東京の日常に、媚薬のように波紋を広げることになるだろう。

プロフィール

中村佑子(なかむら・ゆうこ)
1977年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。哲学書房にて編集者を経て、テレビマンユニオン参加。美術や建築、哲学を題材としながら、現実世界のもう一枚深い皮層に潜るようなナラティブのドキュメンタリーを多く手がける。映画作品に『はじまりの記憶 杉本博司』、『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(2017年カナダ国際ドキュメンタリー祭HOTDOCS正式招待作品)、テレビ演出作にWOWOW「はじまりの記憶 現代美術作家 杉本博司」(2012年国際エミー賞・アート部門ファイナルノミニー)、NHK「幻の東京計画 首都にあり得た3つの夢」(2015年ギャラクシー奨励賞受賞)、NHK「建築は知っている ランドマークから見た戦後70年」等がある。現在、文芸誌『すばる』にてエッセイ「私たちはここにいる 現代の母なる場所」を連載中。近年は「女性性」をテーマとしている。

スーザン・ソンタグ
1933年アメリカ、ニューヨーク生まれ、2004年逝去。アメリカを代表する作家、批評家。長篇小説には『夢の賜物』(河出書房新社)、『死の装具』(早川書房)、『火山に恋して』(みすず書房)、『イン・アメリカ』(河出書房新社)がある。また、短篇集や戯曲、『写真論』(晶文社)、『隠喩としての病い/エイズとその隠喩』、『土星の徴しの下に』、『他者の苦痛へのまなざし』、『書くこと、ロラン・バルトについて』、『サラエボで、ゴドーを待ちながら』(以上みすず書房)などのエッセイがある。さらに4つの長篇映画の脚本執筆と監督をし、アメリカとヨーロッパにおいて劇の演出も手がけた。その中には、包囲されたサラエボで上演されたベケットの『ゴドーを待ちながら』の演出も含まれる。2001年に「イェルサレム賞」を受賞。(みすず書房HPより)

日時

3月2日(土) 14:00
3月7日(木) 14:00
*追加公演
3月8日(金) 19:00
3月10日(日) 14:00
*終演後、ポスト・トーク有

上演時間

約120分

注意事項

各回定員約20名
(お申込いただいた皆様に音読の一部を担っていただきます)

会場

慶應義塾大学三田キャンパス
旧ノグチ・ルーム

〒108-8345 港区三田2-15-45
会場お問合せ│03-5427-1621

参加方法

要予約・コモンズパス提示
パス購入はこちら

上演言語

日本語

クレジット

構成・演出|中村佑子
作|スーザン・ソンタグ
翻訳協力|西山敦子
協力|The Wylie Agency (UK) Ltd.
会場協力|慶應義塾大学アート・センター 他

関連イベント

リーディング・パフォーマンス参加アーティスト3名によるポスト・トーク
日時:3月10日(日)14:00の回終了後 
会場:慶應義塾大学三田キャンパス 旧ノグチ・ルーム
定員:50名程度 
参加方法:予約不要・先着順 コモンズパス提示