開催概要

都市にあらたな「コモンズ=共有地」を生み出すプロジェクト、シアターコモンズ。演劇公演、レクチャーパフォーマンス、ワークショップ、対話型イベントなど、港区内で3週間にわたり開催!

シアターコモンズとは?

シアターコモンズは、演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すプロジェクトです。日常生活や都市空間の中で「演劇をつかう」、すなわち演劇的な発想を活用することで、「来たるべき劇場/演劇」の形を提示することを目指しています。演劇的想像力によって、異質なものや複数の時間が交わり、日常を異化するような対話や発見をもたらす経験をアーティストとともに仕掛けていきます。

具体的には、演劇公演のみならず、レクチャー形式のパフォーマンス、創作プロセスを参加者と共有するワークショップ、異なる声が交錯する対話型イベントなどを集中的に実施します。

シアターコモンズは、港区内に拠点をもつ国際文化機関、台湾文化センター、東京ドイツ文化センター、アンスティチュ・フランセ日本、オランダ大使館とNPO法人芸術公社が実行委員会を形成し、「港区文化プログラム連携事業」として港区内を中心に展開します。

ディレクター・メッセージ

グラデーションとして世界を捉える方法相馬千秋(シアターコモンズディレクター)

今、世界は恐ろしく「劇場化」しています。小池劇場、トランプ劇場、劇場型選挙といった表現がメディアを踊り、ヘイトやテロリズムなど極端な思想信条がコマーシャル動画のように物語化されネット上に拡散されています。世界を瞬時に書き換えてしまうような派手な台詞や大げさな身振りに、人々は熱狂や恐怖を覚えつつ、SNSによって絶え間なく提供・拡散される筋書きをひたすら追いかけているようです。その大きな声は、私たちの感情を刺激し、共感を誘うわかりやすい台詞を次々と畳み掛けてきます。それが嘘か真実かはもはや問題ではなく、むしろ人々の潜在的な欲望を代弁し、むき出しの好奇心を満たすシナリオであればあるほど、人々はさらに激しく「劇場」を求めていく⋯⋯。そんな時代が、明らかに到来しているように感じます。

しかし、そもそも劇場は、そのような場所なのでしょうか。悲劇的なシナリオ、大げさな台詞や身振りで観客の感情を揺さぶり、共感と一体感を誘う。その果てに観客がカタルシスを得てすっきりしてしまっては、劇場の外の社会で、現実を変革しようとする気持ちさえもそぎ落とされてしまう。そのように従来の演劇を批判したのは、ナチズムが台頭した時代を生きたブレヒトでした。劇場が、感情移入や操作に陥る危険性の高い場所だとしたら、そこからどう批評的な距離を保ち得るか。むしろ劇場とは、対象から距離をとり、観察し、議論し、社会を変革していくための場所としてあるのだと。

今、私たちが連日メディア上に踊る「XX劇場」という言葉を、演劇や劇場の歴史に対して不名誉なことだと憤ることは簡単です。しかし、これもまた一般の人々が演劇なるものにもつイメージの表れであることも認めなければならないでしょう。

舞台に上がることができる特権をもつ一部の人間が一方的に提供する大げさな台詞や大きな身振りが、複雑な世界を単純化し、二分化するのだとしたら、私たちはむしろ、複雑な世界を複雑なまま見るために、誰もが着脱できる小さな身振りをそれぞれの身体や思考にまとっていくことが必要なのではないか。大きな身振りで引かれてしまう境界線を攪拌し、世界をグラデーションとして捉える、そんな装置としての演劇/劇場が、今こそ必要なのではないか。

シアターコモンズは、世界をグラデーションとして捉えるための、ささやかにして効果的な方法を、改めて演劇/劇場の原点に立ち返りながら提示するプロジェクトとして考案されています。その名のとおり、演劇の「コモンズ」、すなわち演劇がもつ「共有知」を活用し、社会の中に再び「共有地」たる理念としての劇場を出現させるのです。それは、フェスティバルと呼ぶにはあまりにささやかで、劇場と呼ぶのに十分な固定的な中心地をもちません。それは、一見すると、都心の一角で行われるパフォーマンスや映像上映、ワークショップ、レクチャー、対話型イベントなどの集積にすぎないかもしれません。しかし、そこに生成される経験のすべてを「シアターコモンズ」と名指すことで、確かに見えてくるものがあるはずです。

3週間にわたり、港区の一角がテンポラリーなコモンズとしてぽっかりと開かれ、そこに、異なる時間が出現します。そこでは、経済破綻したギリシャの古い港に流れる時間と、東京の時間が交錯するでしょう。あるいはかつてマレーシアが夢見た近未来2020年と、東京が秒刻みで準備を進める2020年がオーバーラップするかもしれません。また、その共有地に招かれるのは、私たち人間や大人だけではありません。子供たちの声、歴史の中の死者たちの声、自然の声、動物の声が、アーティストを媒介して聞こえてくるはずです。世界をグラデーションとして捉えるために、解像度を上げること。耳をすますこと。異なる時間軸をもつこと。完成形ではなくて、そこで生成される経験をプロセスで捉えていくこと。それらを、小さな身振りの中に実践するツールとして経験者自身が獲得していくこと。

シアターコモンズは、それらすべての試みの中で生成される、経験としての演劇/劇場を、そこに参加するすべての方々と共有し、更新していくプロジェクトです。随分わかりづらいことを書いてしまったかもしれませんが、わかりやすいこと、共感しやすいことに警戒しなければならない時代に、私たちは生きています。ぜひご参加いただければうれしいです。

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基本情報

  • シアターコモンズ ’18
  • 会期|2018222(木)311(日)
  • 会場|東京都港区エリア各所
  • 主催|シアターコモンズ実行委員会
  • 台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
  • ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター
  • 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
  • 在日オランダ王国大使館
  • 特定非営利活動法人 芸術公社
  • 共催|

    港区 平成29年度港区文化プログラム連携事業
    慶應義塾大学アート・センター

  • パートナー|SHIBAURA HOUSE
  • 助成|アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
  • Scene/Asia事業助成|国際交流基金アジアセンター アジア・文化創造協働助成、公益財団法人セゾン文化財団

クレジット

  • シアターコモンズ実行委員会
  • 委員長|相馬千秋(特定非営利活動法人芸術公社 代表理事)
  • 副委員長|ペーター・アンダース(ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター所長)
  • 委員|ティエリー・ベイル(在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本)
  • 委員|朱文清(台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター長)
  • 委員|バス・バルクス(在日オランダ王国大使館)
  • 委員|大舘奈津子(特定非営利活動法人芸術公社 理事)
  • 監事|須田洋平(弁護士)
  • シアターコモンズ実行委員会事務局
  • ディレクター|相馬千秋(芸術公社)
  • 制作統括|戸田史子(芸術公社)
  • プロジェクト・コーディネート|大舘奈津子(芸術公社)、清水聡美、田中沙季、藤井さゆり(芸術公社)、堀朝美
  • 広報・編集|柴原聡子、橋場麻衣
  • 翻訳|アレックス・デュドク・ドゥ・ヴィット、相磯展子(Arts Translators Collective)
  • 予約管理システム|富田明日香(quinada)
  • アート・ディレクション&デザイン|加藤賢策(LABORATORIES)
  • ウェブデザイン|加藤賢策、伊藤博紀(LABORATORIES)
  • インターン|芝田遥、重城むつき、庄子真汀、白鳥大樹、増田祥基、山口敦子、山本ちあき
  • 法務アドヴァイザー|須田洋平(弁護士/芸術公社)