レポート

ドラマトゥルギーラボ|第4回

2018.2.20

1/8に、ドラマトゥルギーラボの第4回が行われました。

このラボでは、語るためのフレームや話法を生み出す技術というテーマのもと、各回アーティストを講師に招いてレクチャーとワークショップを行っています。今回お迎えしたのは映像作家の百瀬文さんです。
百瀬さんによるラボは、彼女の制作したパフォーマンス・シリーズ<定点観測>のデモンストレーションから始まりました。この作品は、アーティストがホスト役として参加者にアンケートを実施し、その回答を順に読み上げさせていくというものです。パフォーマンスの様子は録音され、部屋の電気を消した上で再生されます。暗い部屋のなかで、意味を成さないはずの言葉の羅列が徐々に繋がった文章として聴こえてくることに、参加した13人の受講生たちはまるで自分たちがアーティストの用意した台本を読み上げていたかのように錯覚させられたようでした。

デモンストレーションを終えて、この作品への参加は「自分の言葉が奪われる体験」であると百瀬さんは説明しました。言葉/声は一体何に所属するのかという問題への関心は、≪聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと≫(2013)をはじめとした彼女の近作にも共通するものです。さらに、絵画制作からスタートし、映像というメディアを選び取った経緯や、好ましいと思う具体的な作品について紹介した百瀬さんは、受講生に対し、自身のもつ作品制作のイメージとして水で満たされたグラスを図解しました。グラス=構造を作り込むことを重視する彼女にとって、緊張状態におかれたグラスの水面から零れる水は、作品における予期せぬノイズとして歓迎されるのです。

アーティストとして自分のもつドラマトゥルギーとは、グラスを用意することだといえると、百瀬さんはレクチャーを締めくくりました。ラボの後半では、事前課題として受講生が鑑賞していた百瀬さんの近作3作品について、作品構造や方法論について掘り下げるべく、受講生とアーティストとの対話がもたれました。受講生それぞれの着眼点はそれぞれの仕方で作品に切り込み、受講生は自ら語り始める技術を獲得しつつあるようでした。

(芸術公社インターン・重城 むつき)

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