レポート

ドラマトゥルギーラボ|第3回

2017.12.28

ドラマトゥルギーラボの第3回が12/18に行われました。

当ラボでは、「語るためのフレームや話法を生み出す技術」をテーマに各回ゲストをお呼びして、ワークショップを行っています。今回のゲストは、映画監督の深田晃司さんです。
深田さんが作品作りにおいて重要視していることは、いかにして観客の想像力にアクセスするか、ということです。観客が作品を見て、登場人物に共感して終わるのではなく、作品からなぜその登場人物はそうしたのか、そう考えたのかなどを想像させるところまで含めた作品を作りたいと深田さんは語ります。

そのために必要なことは「作品の”余白”」と「作品の他者性」です。
「作品の”余白”」とは、観客が作品に対して想像する余地を残すことです。物語をすべて描くのではなく、核心の周囲のみを緻密に描くことで、観客が核心に想像によって迫っていくのです。全てを描くことは、プロパガンダにつながる可能性があります。
そして「作品の他者性」とは、作者が作品にとって絶対的な存在ではなく、もはや作者の作品解釈すらただの一解釈でしかないような関係性の自覚を指しています。物語上に散りばめられた要素から何を読み取るのかは観客次第であり、そこに作者の存在はありません。観客が作品を鑑賞している時点で、作品は作者の手から離れた場所に存在しているのです。この作者と作品の離れた関係性を自覚することが、観客の自由な想像を生み出します。「100人の観客が作品を見たときに、100通りの解釈が生まれること」が理想だと、深田さんは語りました。

以上の講義を受け、後半には深田さんと受講生のディスカッションがありました。『淵に立つ』に関する質問や、講義を踏まえての創作上の相談など多様な話題が登場し、それら一つ一つに対し、深田さんは明快な回答をしていました。創作意欲を大きく掻き立てられるワークショップでした。受講生たちによるドラマトゥルギーの探求は続きます。

(芸術公社インターン・増田祥基)

← 最新情報一覧はこちら