レポート

夏季集中ラボ3日目|岩手県遠野市

2017.8.6

夏期集中ラボ、3日目は民俗学者の赤坂憲雄さんのワークショップです。こちらは講義形式ではなく、赤坂さんのご案内で遠野の各所をめぐることに。

縁結びの神様としても知られる卯子酉神社から、山の遊歩道をしばらく歩いて五百羅漢へ。緑深い森にゴロゴロとした大きな岩が縦一列に連なっている場所です。苔がびっしりと生えた岩をよく見ると、羅漢像がレリーフ状に刻まれています。これは、約200年前にたびたび東北地方を襲った飢饉で亡くなった人々を供養するために、当時の僧が刻んだもの。不思議な光景と、数え切れないほどの羅漢像の迫力は圧倒的です。受講生たちも岩を上り、場所のもつ強さと、度重なる飢饉の歴史や鎮魂に思いを馳せていました。

卯子酉神社
五百羅漢と受講生たち
五百羅漢への入口で赤坂憲雄さんに説明を受ける

続いて、遠野が見渡せる高清水高原展望台へ。かつて遠野の平地が湖だったことがうかがえるという赤坂さんの解説も納得の光景です。

遠野めぐりの後は、ワークショップの会場である遠野早池峰ふるさと学校へ移動。隣にある早池峰神社にお参りし、地元のお母さんたちが作ってくださった地のものを使った昼食をいただきました。

昼食を作ってくださったお母さんの一人が遠野一の語り部だそうで、急きょ民話を聞くことに。オシラサマや座敷童など、よく知られる遠野の民話に一同聞き入りました。

午後は、赤坂さん、岡田利規さんを交えてのディスカッション。受講生一人ひとりの問題意識や現時点で考えていることにお答えいただくかたちで思考を深めていきました。

受講生の提起に不在や余白、目に見えないものといった、存在が曖昧なものへの関心が共通することを受け、赤坂さんからは、「二項対立が機能しなくなってきている現在、あらゆる境界は濃淡、グラデーションでしか説明できないものになりつつある」という意見をいただきました。
そこから話題は福島の現状へと移行。福島在住の参加者が感じる震災から6年を経た今の問題点や、打開したい点などを話し合ううちに、当事者とそうでない人、圏内と圏外といった枠組みの限界に話題は移り、それらをグラデーションで考えることの可能性を話し合いました。この議論について岡田さんは「思考がある普遍性をもち、まったく別の回路で別の問題意識につながる」と語り、思考の尺度を常に変換させながら創作に活かしていくことの重要性を学びました。

明日は陸前高田に移動します。

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