レポート

夏期集中ラボ、スタート

2017.8.4

本日、シアターコモンズ・ラボ「夏期集中ラボ」が始まりました。本日から5日間、花巻、遠野、陸前高田をめぐりながら、合宿ワークショップを進めていきます。
今日の会場は花巻駅からほど近いところにあるコワーキングスペース、co-ba 花巻。

冒頭は、主催の芸術公社代表理事・相馬千秋が、昨年まで行われた「みちのくアート巡礼キャンプ」の話を交えつつ、本プログラムの概要を、お話しました。過去2年の蓄積として、村上愛佳さんや佐竹真紀子さんのプロジェクトなど、提案されたプランがその後実現した例も紹介されました。
参加者とスタッフの自己紹介では、それぞれの問題意識や東北への思いが語られ、相馬からは「この1か月ですごく大きいものをインプットするはず。すぐに消化できなくても、その後じわじわと響いてくるし、残るものも大きい。期待してください。」というコメントがありました。

本日のワークショップは、人類学者の石倉敏明さんと作家の古川日出男さん。
石倉さんは、食を起点に、神話や民話の世界を紐解いていくお話をされました。神話や祭事などあらゆる事例を次々と紹介しながら、東北に残る民俗には、自然や動物、死者といった非人間と人間の距離が近く、交わる文化があり、それは食べ物そのものを神とするなど、とくに食文化に表れるというお話がありました。
取り上げた東北の祭事や民話などに見られる神々は、外から来てまた去っていく(Stranger)であり、それらは人間の世界の縁からあふれるノイズ(死と自然)である。そのノイズと触れることにより、人間社会が自分たちの文化によるコード(生命)をつくることができる、という石倉さん。テーマは、さまざまな土地では人間と非人間の境界を越えて連続するコスモロジー(生態学的宇宙論)へと展開。身体と風土の関係=内臓と外臓の関係を、食や民俗文化を通して実践してきた東北でそれを考ることの重要性が語られ、それは宮沢賢治が提唱していたことにつながるというお話でしめくくられました。

古川さんは、石倉さんのレクチャーへの応答から始まり、震災後のご自身の活動や今現在感じていることを語ってくれました。震災直後は果たして日本の悪い瞬間だったのかという刺激的な問いを発端に、非日常だったからこそアートが有益になった震災直後を経て、平常に戻ったように見える今も心の中に非常時を抱えている人たちのためにアートがすごく必要なものになる現代の状況への思いが語られました。そして、朗読劇『銀河鉄道の夜』や、『平家物語』の現代語訳をされたお話を挙げて、ご自身の創作と震災がつながり、それは文学というかたちで表れることなどをお話いただきました。
古川さんのストレートな言葉に参加者も強く反応、後半はディスカッションに。個々が感じたことや、自分自身の体験や考え率直に話し合う場になりました。対話を進めていくうちに、厄災を受けた地域とそうじゃない地域、被災者とそうでない人の違い、その境界や交わりをどう考えるべきかに発展。大きな問題に戸惑ったり迷ったりする感情をすぐに言葉や表現にできないこと自体を大切にした方が良いという古川さんのメッセージに、参加者一同、大いに勇気づけられたようでした。

二人の講師と参加者の対話は、明日も続きます。

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