パフォーマンス学ラボ
ウィルス共生時代、
人類と「パフォーマンス」の関係を進化させるために
芸術史
パフォーマンススタディーズ
批評
創作
未知のウィルスが人類に不安と変容をもたらしている今、私たちは都市文明的な人間の思考、身体、生活圏、その振る舞いであるパフォーマンス(行為、演技、遂行)の関係を捉え直すよう迫られています。私たちは潔癖な要塞都市の外に他者を追いやることで、計測可能な安全を確保してきましたが、これからは逆にウィルスに寄り添いサバイブしていく方法論を、計測不可能な現実を土台に、クリエイティブに考えていかねばなりません。本ラボでは、気鋭のパフォーマンス学研究者・批評家の岩城京子氏をディレクターに迎え、今の私たち人類の身体が置かれた状況とパフォーマンスのあり様を、ジェンダーと弱者、仮想性、環境問題などを切り口に徹底考察し、「私たち人類」といういう架空の集団意識の枠外にあるモノたちとも結び直す思考を、パフォーマティブにアップデートします。
スケジュール
各回:18:00-20:30
第1回 2020年6月8日(月)
「パフォーマンス学のはじまりと基礎」
第2回 2020年6月22日(月)
「パフォーマンスとマイノリティ」
第3回 2020年7月6日(月)
「パフォーマンスと仮想空間」
第4回 2020年7月20日(月)
「パフォーマンスと環境問題」
ディレクター
岩城京子
応募条件
・年齢、国籍不問(ただしワークショップは日本語で実施)
こんな人におすすめ
・これまで「演出家、美術家、役者、ダンサー、パフォーマー」等として活動してきたが、コロナ危機で現場が減り、時間ができた。この機会に「パフォーマンス」とは何か、歴史的・社会的に捉え直したい。
・アーティストとして、舞台芸術や映像表現、美術作品等において「パフォーマティブなるもの」を探究したい。そのための理論的なベースを作りたい。
・儀礼的・社会的な身振りとしての「パフォーマンス」に興味があり、人間がなぜパフォーマンスをしてきたのか、その意味やこれからの可能性を分野横断的に考えてみたい。
・権威がどれほど無自覚なパフォーマンスの上に再生産されているかを知り、それをもとに今後の芸術創作/芸術批評の指針を構築していきたい。
ディレクター・メッセージ
「パフォーマンス・スタディーズ」という学問分野は、主に米国を中心に、八〇年代頃から広がりを見せました。いまでは多くの欧米圏の演劇学部は「シアター&パフォーマンス学部」と名称を変更しています。残念なことに、日本には未だ、パフォーマンス・スタディーズを一貫性のあるカリキュラムのもと学べる大学が存在しません。ですから「演劇学」と「パフォーマンス学」がどう違うかわかりますか? という問いに、正確に答えられる方はほぼいないのではないかと思います。
本ラボでは、この二つの似て非なる学問の後者について、初心者向けに噛み砕いて考えていきます。「シアターコモンズ」など実験的芸術祭で上演される演目をきちんと理解したいのなら、もはや既存の演劇学をかじっているだけでは無理です。批評的なパフォーマンス分析を可能にするために、隣接学問の応用的理解、舞台読解のための記号論、そしてそれを言葉にするための批評言語を身につける必要があります。とはいえこれは大学ではないので、そんなに小難しいことばかりはしゃべりません。日常的に舞台芸術に触れることが「ただ好きだ」とい方が、もう少し現代アートを理解するための手助けが欲しいときの思考的な支えになる講座になればと思っています。楽しく臆せず自発的に思考し、他者の意見を敬意をもって聴くことができる方でしたら、どなたでも参加して頂きたいです。
各回内容
第1回 2020年6月8日(月)18:00-20:30
「パフォーマンス学のはじまりと基礎」
最近良く耳にする「パフォーマンス」とはいったい何なのでしょうか。演劇やダンスとどう違うのでしょうか。第一回目となる授業では、まずパフォーマンスという学術用語が、どこから生まれて、どのような学者が研究に貢献し、どのように発展していったかの基本のお話しをします。アーヴィグ・ゴッフマン『行為と演技――日常生活における自己呈示』、ヴィクター・ターナー『儀礼の過程』、J.L.オースティン『言語と行為』といった基礎文献の抜粋をカジュアルにかみくだいて初心者向けに読み説きます。日常におけるパフォーマンス、演劇のパフォーマンス、儀式的なパフォーマンスと、その三つの境界線について考えていきます。
第2回 2020年6月22日(月)18:00-20:30
「パフォーマンスとマイノリティ」
パフォーマンスは、みずから率先して「するもの」というよりも、他者に促されて「させられるもの」なんじゃないか。そんな素朴な疑問からはじまり、歴史的に「弱者」の立場に置かれてきた、女性、性的マイノリティ、非白人(もちろん日本人も含みます)、奴隷、難民、老人、障がい者たちなどが、どのようなパフォーマンスを強要されてきたかを考えます。その弱者の議論には、性的弱者、民族的弱者、言語的弱者、経済的弱者などが含まれます。ジュディス・バトラー著『ジェンダー・トラブル:フェミニズムとアイデンティティの攪乱』などを参考にします。さて、日本でパフォーマンスのルールを決めている「強者」は誰なのでしょうか。
第3回 2020年7月6日(月)18:00-20:30
「パフォーマンスと仮想空間」
いままで演劇やパフォーマンスは「いまここ」に「生身の身体」が集うことで誕生する「一回性」のイベントだと思われていました。しかしバーチャル空間の誕生により、過去や未来のコンテンツも「いまここ」で楽しめて、生身の身体はウチにいながら頭脳だけコンピューターに没入して、しかも何度でも繰り返しその映像を楽しめるというデジタル・パフォーマンスの時代に突入しています。また人間はもはや制御主体ではなく、スマートデバイスによって「パフォーマンスさせられる弱者」の立場に降格されつつあります。ポール・ヴィリリオ著『情報化爆弾』などを参考に、仮想空間の誕生で、パフォーマンスがどう進化・変化しているのかを考えていきます。
第4回 2020年7月20日(月)18:00-20:30
「パフォーマンスと環境問題」
ギリシャ悲劇の時代から、演劇では「人間」がつねに主人公でした。けれどいまや巨大台風、放射能汚染、パンデミック、空気汚染、地球温暖化などにより、人間は環境により踊らされる道化役へと降格させられることを余儀なくされています。いわゆる「人新世(アンスロポセン)」の時代において、パフォーマンスや演劇では、どのように動植物や環境と新たな関係性を結びなおし、人間中心主義な視座とは異なるドラマトゥルギー(作劇法)を考えていくことができるのでしょうか。またそのドラマトゥルギーは、どのように現実世界に適応可能なのかをドナ・ハラウェイやティモシー・モートンを引用しながら考えていきます。
プロフィール
ディレクター
岩城京子
いわき・きょうこ
演劇パフォーマンス学研究者、演劇学博士
2001年から舞台芸術を専門とするジャーナリストとして朝日新聞などに寄稿。2011年よりアカデミズムに転向。2017年にロンドン大学ゴールドスミスで博士号(演劇学)を修め、同校にて教鞭を執る。単著に『日本演劇現在形』(フィルムアート社)等。ケンブリッジ大学出版、ラウトリッジ出版などの書籍・学術誌へ多くの論文寄稿。2017年にアジアン・カルチュラル・カウンシルの助成を得て、ニューヨーク市立大学大学院シーガルセンター客員研究員。2018年4月より日本学術振興会特別研究員(PD)。2020年9月頃よりアントワープ大学芸術大学専任講師着任予定。
応募要項
応募方法
【聴講生 追加募集!】
シアターコモンズ ・ラボ「パフォーマンス学ラボ」は定員に達したため、応募を締め切らせて頂きました。
沢山の皆様のお申込、誠にありがとうございました。
大変好評につき、本ラボの第一部レクチャーパートを視聴する聴講生を追加募集いたします。
【参加費】
各回1,500円
*各回とも定員100名、先着順
【お申込み方法】
上記応募フォームよりお申込みください。決済完了時点で聴講が確定します。
【注意事項】
・第一部レクチャーパート(一方向)のみの聴講となります。第二部の双方向ワークショップ形式部分にはご参加頂けませんので予めご了承ください。
・本ワークショップは、オンラインでの開催となります。リアルタイムでの受講となりますので、インターネット接続が安定した静粛な環境からのご参加をお願いいたします。
・聴講にあたり、事前・事後の宿題の提出はございません。
・レクチャー配信リンクを開催前日までにお送りいたします。
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以下のワークショップ受講者は定員に達したため、すでに募集を締め切っております
参加料
通し受講:一般 11,000円/学生・アーティスト割引 8,800円
単発受講:一般 3,000円/学生・アーティスト割引 2,500円
*先着順(通し受講30名程度、単発受講10名程度)
*参加料は応募時にPeatixよりお支払いください。決済完了時点で受講が確定します。
<学生・アーティスト割引対象者について>
*学生割引は、2020年度に高校・専門学校・大学・大学院等に在学中の方が対象となります。Peatixからのお申込みフォームに、ご所属等詳細をご記入ください。
*アーティスト割引は、継続的にプロフェッショナルな表現者として活動されている方が対象となります。年齢制限や分野限定はございません。Peatixのお申込みフォームに、活動の詳細をご記入ください。
参加形態・注意事項
・本ワークショップは、オンラインでの開催となります。リアルタイムでの双方向型の受講となりますので、インターネット接続が安定した静粛な環境からのご参加をお願いいたします。
・第一部はレクチャー形式(一方向)、第二部はワークショップ形式(双方向)となります。
・受講前に事務局より、参考資料や宿題を送付します。事前にお目通しください。
・ワークショップ当日は事務局が指定するZoomにアクセスしてご参加頂きます。
・状況が許せば、7月中に東京にて講師・受講生の有志が集まる交流会を別途開催します。状況を鑑み開催の可否を7月6日の回までにご連絡いたします。