レポート

ドラマトゥルギーラボ|第5回

2018.2.22

ドラマトゥルギーラボの第5回が、1/15に行われました。

当ラボでは、「語るためのフレームや話法を生み出す技術」をテーマに各回ゲストをお呼びして、ワークショップを行っています。今回のゲストは、作家の温又柔さんです。
今回テーマとなったのは、自分の主張とその伝え方、そしてそのための作品との距離の取り方でした。伝えたいことを読者に「強要」するのでは、読者の物語を崩すことはできないと温さんは言います。温さん自身のテーマは、自らの生い立ちと名前からくる人々の固定観念への反発です。しかし、そのような周囲から強いられたものに対してただルサンチマンを語るだけでは、結局その固定観念の補完物にしかなることができず、また作品の自己所有にしかなりません。読者にとっては他人事にしか思えません。そうではなく、自分の主張を読者に接続するためには、「強要」ではなく「誘惑」することが大事です。「誘惑」し、読者を作者の世界に引きずりこむ。そうすることで、固定観念を強いてくる人々と、反発するのではなく、和解できるようになります。

その「誘惑」のために、作品と距離をとることが重要です。温さん自身も、小説を第一人称で書き、その登場人物に自分の主張を語らせることで、小説を自らの癒しにしてしまっていたときがあったそうです。そこで温さんは、小説を第三人称で書くことで、登場人物と距離とることができ、作品を客観視できるようになった、と語りました。また、それは同時に小説の世界観に、読者の「遊び場」を作ることにもなります。その「遊び場」が、読者を「誘惑」し、作品と読者を接続するのです。
「わたしの名前は導火線」の朗読に始まり、講義があり、その後ディスカッションととても濃い内容となりました。講師の温さんの、自身の経験をもって語られる作品との向き合い方は、これから表現、創造を志す受講生にとって大きな助けとなりました。今回でドラマトゥルギーラボは終了しますが、このラボの成果はいつか受講生の作品として観ることができるはずです。

(芸術公社インターン・増田祥基)

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