レポート

森山直人ラボ|第3回

2017.8.30

8/24に、森山ラボの第3回目が、港区・SHIBAURA HOUSEにて行われました。

このラボでは、演劇批評家であり京都造形芸術大学舞台芸術学科教授の森山直人氏をディレクターに迎え、舞台芸術史と「いま・ここ・わたし(たち)」を接続する技術というテーマのもと、各回講師を招いて講座を行っています。今回は、静岡県舞台芸術センターSPAC文芸部の演劇研究者・横山義志氏による、「身体」「演技」「俳優」についての講義となりました。
まず、森山氏によるイントロダクションとして、人間主義の下で個人の「身体」の問題が取り上げられるようになった近代、そして脱近代、ポスト近代の三度にわたって「身体」の問題は広がりをみせているということが示されました。舞台芸術においては、近代以降、「俳優」が戯曲を上演する上での「演技」において「身体」というものが考えられてきたといいます。

横山氏によるレクチャーは、歌と踊りのない演劇が舞台芸術史上、どの時点で生まれたのかという問題提示から始まりました。この問題を考えるため、横山氏が焦点を当てるのが演技論です。演劇から音楽が排除されていった根拠としてリアリズムを考えた19世紀後半のフランスの演出家・アントワーヌの例や、17世紀の作曲家・リュリによる音楽劇上演の独占の影響について紹介しながら、デクラマシオンという朗誦法が修辞学の教育を受けてきた俳優による演技術であり、古代ローマの弁論術をもとにしたものであることが明らかにされました。そしてこの弁論術に則り、俳優が自由人としての地位を獲得するために、アジア的・奴隷的とされた歌と踊りの要素を演技術から排除していったと考えられるのです。

講義の後半では、今回の講座受講前に受講生それぞれが提出していた課題が森山氏によって全体に紹介されました。受講生が論点とした問題意識についてのコメントの後、横山氏への質疑応答となりました。弁論術の一人称的な話し言葉から演技術の他者を演じる言葉へのすりかわりについての疑問や、アジア的なものをいかに探っていくかという質問などが寄せられ、横山氏と受講生との熱心な対話が時間いっぱいまで続きました。

(芸術公社インターン・重城 むつき)

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