夏期集中ラボ2日目|花巻から遠野へ
2017.8.5
夏季集中ラボ、2日目は花巻から遠野へ移動し、対話やワークショップ、神楽鑑賞など盛りだくさんの内容です。
午前中は1日目に続き、石倉敏明さん、古川日出男さんとの対話です。参加者の一人から、大量消費文化が当たり前の生活を送っている現代に、自分とつながる風土や東北らしさをどう見出すべきかという問題が提起され、人工物や商品なども取り込んだ上で、生態系や非人間を含めた循環を作ることは可能かを議論。講師からは、近代以降の社会が次のフェーズに行くためには、等身大の小さなモノや工夫や技術から見直し、線的ではなく、らせん状に、過去をも射程に入れながら未来に向かうことが必要、それこそアートの発想だという意見がありました。
そこから岩手県遠野市に移動、遠野の民俗や歴史を紹介する遠野市立博物館を訪問。博物館では、遠野文化研究センター研究員の前川さおりさんにご案内いただきました。遠野物語とその背景にある遠野の生活文化をじっくり解説いただき、一同遠野ならではの魅力に一気に引き込まれたようです。
本日のワークショップは岡田利規さん。震災以降に発表した『現在地』『地面と床』『部屋に流れる時間の旅』という3つの作品や、能をテーマにした『NŌ THEATER』を中心に語っていただきました。プライベートでは九州へ移住もし、作品を作る上で震災が大きな分岐点となった岡田さん。取り上げた作品はいずれも震災を想起させるものである一方、それが震災というコンテクストを共有していない人にも響くものにすることを意識してきたそうです。海外公演を多く行うことで想定する観客が変わってきたこと、その延長線上に未来の人や死者という時空を超える存在がいるとお話くださいました。
そこから話題は、最近の作品に頻繁に登場する「幽霊」に。過去を現在化した存在である「幽霊」は、時間を超越できたり、その場で起きなかったことを表現できる演劇との相性が良いというお話から、コンセプトやもととなるアイデアと実作にしていく方法の両方が並行して進んでいく実践は、参加者にとっても多いに役立つものになりました。
ワークショップの後は、遠野に伝わる神楽を鑑賞。1700年前に始まった塚澤早池峰神楽のうち、3つの迫力ある舞を堪能しました。
最初の演目である汐汲み舞は、両手におけを持った女が出てくる早池峰神楽の代表的な舞の一部。続いて、釣竿をもった恵比須様と天照大神という神同士のやりとりが描かれる恵比須舞、神様の化身である権現様という獅子舞が見られる権現舞と、それぞれ異なる舞を楽しみました。